6月15、16日 *repo* GAKU
『激震の東北遠征』 前編
(はじめに * * * * * このたびの地震で被災された皆様には謹んでお見舞い申し上げます。
また、私どもの釣行に際して、ご心配をしていただきました皆様方、この場をお借りして、心より御礼申し上げます。)
『岩手で大地震!』…… その第一報が届いたのは、「出発」を13時間後に控えた土曜日の朝のことでした。
それは職場でのことでしたが、居合わせた人々の中で、誰よりも衝撃を受けていたのが私だったことは言うまでもありません。
その日、仕事の合間を縫ってはあちこちから情報収集に努めます。
そして、メンバーと連絡を取り合い、協議を重ねます。
この日のためにずっと以前から休暇を申請し、毎年恒例の東北遠征を心から楽しみにしていた面々ですが、
さすがに、電話の向こうの声は曇っています。
中止か、決行か・・・
結局、その夜の出発は見合わせ、現地の状況をさらに時間をかけて掴むことにします。
で、翌朝、宿泊予定のクボタロッジのオーナーに、現地の様子を再度問い合わせてみると、
「当地ではほとんど被害はなく、お客様はいつもと変わらず釣りに出ている…」とのこと。
さらに確認すると、高速道路や新幹線などの交通機関もすべて平常に戻っています。
・・・ならばと、我々が出発の決断を下したのは、日曜日の朝でした。
メンバー全員が揃わなかったのは本当に残念でしたが、今回は、KIKUちゃんと私の二人での釣行です。
まずは、東北道を途中で降り、ICからほど近い、東北南部の渓流を訪ねます。
開けた渓の上に広がるのは、すっかり夏色の空です。
昼頃から、にわかに活性が上がったようで、何気ない瀬の中からフライにアタックしてくるのは、明るく色白の岩魚たちです。
KIKUちゃんも、良型のべっぴん岩魚を相手に撮影会です。
正味4時間くらいだったでしょうか。
良い時間だけと、ちょこっと竿を出したつもりでしたが、十分に遊ばせてもらいました。
そこからさらに3時間弱車を走らせ、お目当ての八幡平の渓に到着したのは、西陽が山の斜面を染め上げる、
まさにイブニングタイム。
例年より水が少ないのが気になりますが……。
案の定、この日のイブニングのお相手はお子様達ばかりでした。
その夜、ロッジの玄関の外まで出てこられて、我々を迎えてくれたのは、オーナーご夫妻の、
いつもと変わらぬ温かい笑顔でした。
温泉で疲れを癒し、美味しいごちそうの待つダイニングに入ってみれば、そこは大勢のFFMたちの談笑に包まれています。
まるで、そこだけ別世界のようです。
翌日は、通称「第3区間」と呼ばれる、一日がかりのロングコースに入渓します。
先日、kiyo さん一行が「怒涛の尺ラッシュ」を演じた区間ですが、さすがに二匹目のドジョウはいないだろうと、
今回は期待半分不安半分です。
やはり水は少なめです。
この渓独特の、すばらしい渓相が続きます。
ただ、区間前半は、さすがに連日攻められ続けてきたせいか、魚の出方は渋く、型もいまひとつです。
区間後半は大岩が見られ、落差も出てきます。
反転流や壷を積極的に狙っていきます。
ここぞというところからは、決まって岩魚たちの小気味良いコンタクトが帰ってきます。
ようやくそれらしい型が見られるようになります。
ですが、なかなか「壁」・・・30cmの壁です(笑)・・・を超えられません。
それは、ゴールも間近い区間終盤部、ほんの小さな壷の中を、KIKUちゃんが執拗に狙い続けていたときでした。
待望の尺岩魚です。
まだかすかに錆びを残したようなワイルドな魚体が、この渓の奥深さを物語っているようです。
ピンスポットにたっぷりとスラックを入れてキャスト。
5秒以上はドラックフリーでフライを漂わせていたと言います。お見事です!
丸一日、岩魚たちと遊び続けた、至福のロングコースも終わりを迎えます。
わずかに残る体中のエネルギーをすっかりと搾り取られたかのような「苦行」を終えて、振り返れば、雄大な自然が、
人の営みの非力さを改めて感じさせてくれるかのようです。
その夜、筋肉痛に悲鳴を上げる、若いKIKUちゃんとおじんの私でしたが、ともに温泉に癒され、
ワインの酔いに包まれて、すっかり良い気持ちに。
居合わせた常連客のFFMに混じって、夜遅くまで釣り談義に花を咲かせます。
そういえば、まだ余震はあるのでしょうが、この地では全くと言っていいほど感じられません。もちろん、
だからと言って甘く見てはいけないのは言うまでもないのですが。
・・・つづく。